ロクでもナイズドスイミング

映画の感想を書きます

『リズと青い鳥』ブルーバードか、ブラックスワンか

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リズと青い鳥

 

通じ合う、

呪いの始まり。

 

監督

山田尚子聲の形

キャスト

種崎敦美(みぞれ)

東山奈央(希美)

本田望結(リズ / 青い鳥)

 

あらすじ

吹奏楽部の同期、親友同士のみぞれと希美。高校最後のコンクールで課題曲「リズと青い鳥」の掛け合いパートを任された二人だったが、なぜかうまくいかない。曲のモデルとなった童話の物語に重なるように、それぞれの感情が動き出す。

 


『リズと青い鳥』本予告 60秒ver.

 

 

 

TVアニメ「響け!ユーフォニアム」のスピンオフにあたるんですね。一応が独立した劇場作品であるとは思いつつ、当方シリーズを一切追っていなかったもので、バックボーンが丸ごと抜け落ちております。

聞くところによると本編は部活シミュレーションものだそうで。色々と(トラウマ的に)具合が悪そうだなと思ってる次第ではありますが、追い追いチェックするつもりです、はい…ギギギ

個人的に尊敬してる方から激推しされたこともあり興味を持った反面、以前『聲の形』が苦手だった山田尚子監督の作品なので何となく二の足を踏んでいたところ、丁度のこのことファーストデイがやって来たので、えいこらザボンと飛び込みました。

 

 

2時間越えの大作がひしめく今のシネコンで、90分という比較的短い尺を貫いているだけでもずいぶん心証がいいのだが、いかんせん未知数も未知数。

構成はごく単純なもので、現実の学園パートと、童話「リズと青い鳥」の物語パートが順番に交互に語られていく。正直この童話パートがめちゃくちゃつまらなくて、いくら童話でもわかり切った話を延々とされるのがけっこう苦痛だった。

おそらくコンセプトとしては、動きや感情の機微を際立たせるためにわざとわかりやすく動的なものを排除して、その分アニメーション的な快楽を非現実パートに託したんだろうけれど、だからって何というか、そもそも劇中劇にはありきたりすぎると感じてしまってちょい残念。これだったらなくていいと思う。

それよりやっぱり特筆すべきは学園パートの方で。リノリウム張りの床と靴とが擦れる音までまともに聞かせようとする狂気の繊細さ、カット割りの異常さも含め、触れるだけで血だらけになるようなヒリヒリ感。とにかくアバンタイトルから度肝を抜かれる。

 

個人的には去年の『夜明け告げるルーのうた』と『SING』で、アニメーション表現は即興性すら手に入れたと確信していて、これからアニメはジャズのセッションのような形態に変化していくのだろうと一人想像していた。でもこれ、思いっきり逆行してるというか、山田監督は劇伴の効果からリアルな自然光まで、全てを「意図」の中に閉じ込めようとしてるように見える。ほとんど全シーンが校内のみで展開する”箱庭”的窮屈さもその一端だ。

アニメーションに「世界の解放」を求めている身としてはなかなか承服しがたい考えだが、それでもこの映画がとんでもないことをやってのけてるということくらいわかる。クライマックスの演奏シーンなんか、地獄の釜が開いたみたいな、そう、ゾッとする感覚。

 

脚本に関してはその「引き算の美学」がどこか裏目に出てるようにも思えた。なんかネタ帳のメモ書きが透けて見えてしまうし、この構成でセリフがかった言い回しは上滑りでしかしないような。でもこの場合それがスタンダードなのか。ここに関しては己のリテラシーの低さが原因か。それとももう心が凍てついたのか。…泣いてないしな、半年くらい。

 

主題歌のHomecomingsのカタカナ英語ソングがとても良い。畳野さんの声の表現力は素晴らしいと思う。垢抜けない、独特のリズム感。


Homecomings - Songbirds(Official Music Video)

 

 

それで、何だろうな、結局のところ…静謐な、横の動きの連なりが、縦の運動に変わる瞬間。なんか感覚としてはわかるんだけど、羽ばたくってそういうことなのかな。階段での言葉は、あれは呪いの一言じゃないかな。って、ちょっと不安になってくる。他人の青春が怖い。

多分山田尚子監督とは、世界の憎み方と祝福の仕方がまるで違うのだと思った。そう考えると落ち着くし、『聲の形』のときみたいな拒絶反応は起こらない。純粋に凄いものを見たという身震いさえある。

 

うん、やっぱ結論、俺にはわからない!

ブログ書く気持ちにさせてくれてありがとう、山田さん! 

 

『リズと青い鳥』公式サイト