ロクでもナイズドスイミング

映画の感想を書きます

映画感想『パターソン』Uh-huh.

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パターソン

(原題:Paterson)

 

白紙のページにときめいて。

 

監督

ジム・ジャームッシュ

キャスト

アダム・ドライバー(パターソン)

ゴルシフテ・ファラハニ(ローラ)

永瀬正敏(日本の詩人)

 

あらすじ

ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手の”パターソン”。決まったルートに従って進む一日の中で、彼の唯一の趣味は心に浮かんだ詩を徒然にノートに書き留めること。パターソンの奇妙な出会いに満ちた一週間が始まる。

 


『パターソン』本予告 8/26(土)公開

 

 

 

 

 

時間と人々の会話の中に流れる独特のリズム、それとちょっとしたアイテムの魅力だけで作られた魔法のような映画。毎度のことながら惚れ惚れします。

 

個人的なジム・ジャームッシュ監督の好きなところは、取り立てて大きな事件の起こらないゆったりとした日常を描いていながら「日常の温かみやささいな幸せ」にスポットを当てていないところです。

人の話を全然聞かないヤツ、ノイローゼ気味のヤツ、死にかけてるヤツ、などなどのどうしようもないヤツらがそれぞれのライフスタイルをぼんやり引きずりながら生きている。それが端から見てみると面白いし、何だか見入っちゃうというバランス。ジャームッシュ監督作は大まかにくくると全てがこの精神で作られてるようにも思えます。要は何十年もの間ずっと「俺の好きなもの」を動かして遊んでいるという。

f:id:wakaieriku:20170905164109j:plain誰が言ったか、ニューヨーク・インディーズ。

 

 

 意外と苦味の残る結末が多いあたりもちょうどいいというか、結局身も蓋もない物語だったりするのがこれまたツボを突いてきます。ナチュラルな残酷さを持ちながらもスパッと幕を引く。この感じは落語に近いんじゃないでしょうか。語り口で魅せるスタイルみたいな。

f:id:wakaieriku:20170902204030j:plain一番好きなやつ

 

 

で、今回の『パターソン』。主人公がバス運転手です。列車、喫茶店、タクシーの車内、刑務所、さまざまなシチュエーションで密室会話劇を作ってきたジャームッシュにとっては「これぞ」という感じの題材です。というか、今作は全体で意図的に自己模倣をしているようにも感じられます。

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マッチ箱の街。それなりに満ち足りた行き場のない人々。インプットだらけの毎日。

そんな、街と同名の男”パターソン”の趣味は詩作。彼は詩を通じて、目の前に流れる時間と宇宙を繋げていく。愛おしい光景を言葉にして抱きしめていく。

はっきりと「詩」を中心に据えている今作は、ラストに向かって意外なまでの首尾の良さを見せていきます。ジャームッシュらしからぬストレートなフィクション論というか、パターソン本人を直接励ますような締め方にも見えます。

 

 

僕にはこの映画でジャームッシュ自身は今まで培ってきた表現手法を一回再構築し直して、この真っ直ぐなメッセージに集約させているように感じられました。ジャームッシュがどんな心境でこの映画を作ったのかわかりませんが、今までの鼻に抜けるような優しい苦味に加えて、今回ばかりは少し切実なような印象を受けました。

個人的には、ジャームッシュ監督が好きなものを詰め込んで映画を撮るだけでそれは目映いフィクションになりうると思うし、そのリズムと温度感覚そのものが人に伝播していくんじゃないかと感じています。そういう意味では今回ちょっと窮屈に感じられた部分もありました。

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前作や前々作のような無闇にトガった映画も、また観たいなと期待しております。

愛しています。

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映画『パターソン』公式サイト