ロクでもナイズドスイミング

映画の感想を書きます

映画感想『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』まさかの斜め上

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打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

 

おっさんたちは自力で打ち上がる。

 

監督

新房昭之

キャスト

広瀬すず(及川なずな)

菅田将暉(島田典道)

 

あらすじ

海沿いの田舎町。花火大会を夜に控えた夏休みのとある一日。同級生のなずなに想いを寄せる典道は学校のプールで友人と競争をする。その勝敗は典道にとっての重要な分岐となるのだった。「もしも、あのとき…。」不思議な玉を投げたとき、運命の分かれ道のあの瞬間へと、典道は引き戻されていく。

 


「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3

 

 

 

プロデューサー:川村元気

監督:新房昭之

脚本:大根仁

原作:岩井俊二

という、変態文系おっさん四天王によって作られた本作。

この布陣ですでに逃げ場はありません。

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おっさん①:川村元気    おっさん②:新房昭之

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おっさん③:大根仁     おっさん④:岩井俊二

 

原作は岩井俊二監督のデビュー作である1993年の実写テレビドラマ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』です。

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元が小学生たちの物語であったわけですが、今回のアニメ版では中学生?に設定が改変されています。アニメの小学生描写ほど鼻白むものはないのでいい決断だと思う反面、「大人びた少女」と「ただのクソガキ」が一緒に歩くという構図が役者の身体性を抜きにしては語れないものがあるような気もしていて。

 

実際問題、中学生に改変したことでうまくいったなんてことはなく、プロの発声の安定した声優が演じるバカ中学生の強烈な違和感は最後まで拭えませんでした。

シャフトのぺったりしたアニメで完全に失われた身体性、そんでもって年齢を引き上げたことによって生じたあちこちの齟齬。誰の目にも明らかなくらい散らかった映画に仕上がっています。

 

しかし、失敗作と評されるのは納得ですが、面白くなかったか?と聞かれると、ちょっと考え込んでしまうくらいには変な余韻の残る映画でもありました。

 

 

まず第一に、このアニメ版で物議を醸している「不思議な玉」の存在。ぶん投げるとやり直したいところまで戻れるというドラえもんばりの便利道具なわけですが、これが単純な構造の物語を不必要に入り組ませているだけでなく、実写版のジュブナイル要素さえも打ち消してしまっています。

これはどう考えても「脚本:大根仁」の仕業だろうと。この人の原作モノはいつもやたらとアイテム頼りなわりに、肝心の根底にある精神性を完全に解体して凡百のストーリーに組み直してしまうという悪癖があって(『バクマン。』のときは床を引きずり回してやろうかと思った)、それが今回も見事に炸裂しています。

この不思議な玉によって「少年少女の成長物語」としての意義をうっちゃられた物語は、しばし目的なく追走劇でその場しのぎ的に展開していきます。そして行き詰まっては巻き戻し、失敗したらやり直し、で全くもって節操がありません。

それから、キャラクターを掘り下げることもないまま魔のループにはまってしまった物語は、次第にゆっくりと逸脱としていき、さりげなく暴走していきます。その様は終わるきっかけを探して彷徨うゾンビのようです。

 

少年と少女は海に辿り着きます。物語にもう推進力は残されていません。ろくに描写されてこなかったキャラクターに乗り越えるべき葛藤もそのための時間ももうありません。この行き場を失った物語にケリをつけるには、そう、最後の力をふりしぼっておっさんたちが自力で夜空に打ち上がるほかないのです。

 

 

ドラマの『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の方が物語的なまとまりは良いし、表現も圧倒的に豊かです。でも、個人的にはあの物語は、岩井俊二監督が焦がれている一瞬の輝きのようなものを若さを言い訳に少年少女に転嫁しているように感じられる部分がありました。本当に輝きたいのは岩井さん自身なんじゃないかと。

僕には、解体され再構築されないまま破綻したこの物語を終わらせるために、花火が平べったくも丸くもなるこの世界で、四人のおっさんが打ち上げ花火として夜空で自ら輝いたように見えてならないのです。そしてその瞬間に、この怖いくらい空っぽな映画の中に熱狂に近い感情を見出してしまったのです。

 

ラスト。エネルギーを使い果たしたこの映画は消え入るようにぬるっと終わっていきます。何一つ残るものはありませんが、どこか満ち足りたような、清々しい気分さえしてしてきます。

 

何事もなかったように爽やかな曲
DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO

 

広瀬すず菅田将暉の声がギリギリ主人公二人を人間存在に留めていたように思えたので素晴らしかったです。歌も良かった。

 

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』