ロクでもナイズドスイミング

映画の感想を書きます

映画感想『グリーンルーム』殴られるのが怖くて悪口が言えるか!

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グリーンルーム

(原題:Green Room)

 

最低な感触を、

僕らは目指して。

 

監督

ジェレミー・ソル二エ

キャスト

アントン・イェルチン(パット)

イモージェン・プーツ(アンバー) 

パトリック・スチュワート(ダーシー) 

 

あらすじ

売れないパンクバンドが興行で赴いたライブハウス。そこがネオナチの巣窟だと知った一行はその場のノリで「ネオナチはパンクやんな」と歌い上げる。出番の後、殺人現場を目撃してしまったことから楽屋に閉じ込められた面々は、袋のネズミの状況でネオナチ軍団との死闘を余儀なくされていく。

 

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タイトルのグリーンルームは楽屋とか控え室を指す言葉らしいです。もっともこの映画の中では本当にグリーンなルームなのですが、それが苔というか何というか、若干の有機物感を醸し出していて他にはない独特な印象を受けます。

 

昨年の7月に、思い出すのも嫌ですが、事故で27歳の若さで亡くなった俳優アントン・イェルチンの最後の主演作です。

彼の出演作を全て見たわけではないのですが、2015年公開の「君が生きた証」という映画が本当に好きで、その中でアントンが演じた役にものすごく思い入れがあっただけに、訃報を聞いた時はちょっとショックを受けすぎてしまって、去年の夏ごろは半分廃人のようになっていました。

f:id:wakaieriku:20170225155743j:plainあ、神っていないんだ、って

 

始めにことわっておきますがこの映画、かなりのバイオレンスムービーです。人体破壊を始めとした苛烈なゴア描写など、油断しているとかなりの地獄を見ることになるので、耐性のない方が見る場合はそれなりに心しておいてください。

f:id:wakaieriku:20170223215840j:plainこんなポスターもあることだし

 

 

 

明確な定義は知りませんが、パンクは「労働者」の音楽だと勝手に思っています。世界平和がどうとか以前に、今自分たちの目の前にある理不尽や矛盾に対して、本来社会の中では発言する権利すら与えられていないような人たちが音楽という手段を借りて牙を突き立てる。そのエモさが何よりの魅力だと(個人の見解です)。

自分たちがこれから演るハコがネオナチの根城だと知って、彼らは条件反射的にネオナチdis曲をセットリストに入れます。パンクは反体制の音楽なんだから、右翼がパンクやってんじゃねぇぞ、と。しかしステージに上がって実際にアウェイで演奏を始めると明確に状況が変わっていきます。感覚として「逆鱗に触れてしまった」という。ここら辺の描写が上手いです。

f:id:wakaieriku:20170225173639j:plainそりゃこうなるわ

相手方がアップを始める中で主人公サイドは成す術がありません。だって敵のホームなんだから。音楽を取り上げられた彼らにもう発言権はないのです。

 

この映画の脚本、何というか温度が低いです。主人公たちに特別思い入れがあるような描かれ方もしておらず、ネオナチ側の都合とかも深く掘り下げられません。伏線なども、さりげなくというよりむき身でゴロンと置かれています。

そして何より、今作は痛覚に鈍感です。かなりの致命傷を負ってもその下りが終わると傷だけが残り、そこの痛みはなかったことになります。死ぬときも痛みなく虫ケラの如く死んでいくので、普通に見てても「あれ、いつ死んだ?」とよくなります。

そうした中で、段々と生存しているか否かが最重要事項になっていきます。いつだってそうだろって、まあそりゃそうなんですが。とにかく生き残る。死ぬ気で生きて、帰る。それだけを目的に動くようになります。脇道には逸れません。

 

 

 

それだけ聞くとものすごく単純化された無感情な世界のようにも思えますが、その中でのみ見えてくる若い役者たちのむき出しの存在感が、この映画の「ダウナーなのにエモい」という不思議な特性を生み出しています。とにかく役者のアンサンブルがすごい。

全員の画像は用意してないですが、それぞれ本当に’’いい顔’’してます。

 

グリーンルームの中で出会うアンバー役のイモージェン・プーツ

f:id:wakaieriku:20170225172314j:plain半ば諦めてる顔

イモージェンプーツはとにかく作品ごとに印象が全く違うので圧倒されますが、何かこう、この佇まいにヘタな自分語りとか要らないな、という感じです。

 

そして、パット役のアントン・イェルチン

f:id:wakaieriku:20170225173629j:plain嫌な予感を感じています

照明のせいなのかわかんないけど、やたら顔が白いです。イモージェンプーツと並ぶとすごい白い。戸惑った表情が上手いのもそうですが、アントンのかすれたようなよく通る声がこの映画にとてもよく合っています。

 

 

 

空間をきちんと描いているところも良かったです。どこに行ったら何があって、どこが通れないみたいのが、映画を見ていてちゃんとわかります。逃げ場がないということが観客に実感として伝わってくる。

何か味気ないという意見もわかりますし、僕の思い入れが強すぎるというのも多分にあります。それでも、ゴアがわりと平気で、なんとなくスルーしようと思っていた人にはぜひおすすめです。

ラスト。僕はちょっと泣きました。

f:id:wakaieriku:20170225180440j:plainこういう些細なシーンがたまらないです

 

映画『グリーンルーム』公式サイト|2017年2月11日(土)公開 

 

 語り継いでいく限り消えない

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